2013年02月03日

ロンドン五輪金メダリストの村田選手がプロ転向






 2月2日、大阪市内で開かれた日本アマチュアボクシング連盟理事会の発表によれば、昨夏のロンドン五輪男子ミドル級金メダリストの村田諒太選手(東洋大職)は、プロ転向の意向だという。


 一度は引退表明、後にはアマ続行、そして今度はプロ転向という変転の連続だったが、日本アマ連盟はこれを受け、村田選手にアマチュア選手としての引退を勧告した。


 この件について、感じたこと。


 (尚、ボクシングという競技についてのイスラーム的視点は、あえてここでは取り上げない。それはイスラームが、人間どころか動物の頭を叩くことも禁じていること、精神・身体的害悪を及ぼすものを禁じていることを述べるだけで、十分に推測できるだろう)



 この問題はそもそも、ある種のスポーツ界に存在する、アマ界とプロ界の相違・対抗意識によるもの。



 実際、金をとるかとらないかだけでなく、同じボクシングでもアマとプロでは競技としてずいぶんと違うし、ある種の人々は全く別の競技としてとらえている。


 アマ界とプロ界の交流はほとんどなく、アマ界ではプロ界へと移転した選手を通常アマ界から「クビ」にする。


 今回、僕がこの件について抱いた感想は、アマがいいとかプロがいいとか、そういうことではない。


 そもそもムスリムとして、ボクシングという競技自体、肯定的には捉えていない。


 ただ、「恩義」という点が、気にかかっただけだ。


 プロ選手もそうだが、優秀なアマ選手も、スポンサー的存在、仕事をしながらも練習に没頭できる充実した環境を提供してくれる組織を必要としている。


 それを提供してきてくれていたのが、アマ界および彼の職場である東洋大であった。


 村田選手自身、金メダリストとなれたことどころか、アマ選手として続けてこれたこと自体、それらの組織のサポートのお陰であることを誰よりも知っていよう。


 もしかすると東洋大は継続するのかもしれないが、彼のそこにおける「仕事」の一貫であったアマチュアボクシング部の指導とプロ生活の両立は、先にも述べたアマ・プロ界の関係ゆえに困難になるのではないか。


 プロ界は、アマ界にいい選手がいるとスカウトして、プロ界に連れて行ってしまうのが常套手段。


 そして必ず、というわけではないが、アマで活躍した選手はプロでも活躍する。


 村田選手自身、特に金メダルを取った後には、プロ界から数々のオファーがあった。


 プロのあるボクシングジムからは、1億円というオファーがあったという。


 しかし、それについて村田選手は「プロを選ぶことで金メダルを汚すくらいなら1億円なんていらない。まあ、100億っていわれたら考えますけどね」(出典)と言って、多くの人々を感心させたものだった。


 その後、彼にどんな心境の変化があったのかは分からないが、今、その時の気持ちだけでなく、それよりずっと前の初心、恩義、堅実さを思い出すべきなのではないか。


 彼は27歳、プロのやり方に慣れるまである程度時間もかかるし、プロボクサー生命もせいぜいあと5年がいいところだろう。


 しかも彼の属する階級は、東洋では層が薄くても、欧米・中南米などでは身体能力の高い黒人選手・ラテン系選手らの層が厚い階級である。


 それにプロは試合のダメージも大きくなるし、何らかのアクシデントが起きたりして使い物にならなくなったら、捨てられるだけだ。
 
 
 引退後にプロのジムなどを開いたりしても、そもそもボクシング自体マイナーなスポーツだから、儲けられるわけではない。かといって、アマ界にはもう受け入れては貰えない。



 だがアマ界にとどまれば、引退した後も同じ安定した職場で、かつトレーナーとしてやっていけよう。

 

 プロの世界では世界チャンピオンになるのは無理としても、東洋チャンピオンまでは行くかもしれないし、知名度もあるから、しばらくはやっていけるのかもしれない。



 しかしそれでも、失った恩義はもう取り戻せないだろう。


 


posted by サイード at 04:44 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。