2010年12月19日

緊張の期末テスト(2004年)


 前置き:モーリタニアから「転校」し、サウジアラビア・イマーム大学のアラビア語学校レベル3に編入したサイード。そこで当地での初テストに臨む。

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アラビア語学校校舎
 

 中間テストのほとんどがラマダーン(いわゆる断食月)休み後に繰り下げられたので、ラマダーン後は中間テスト、期末テストと連続した。こちらに来て初めての試験。自分の実力とクラスメートとの比較を確認するためにも、そしてこれからの学業における展望と可能性に一点のともし火を与えるためにも、僕は今回のテストに非常に重要な意味づけを与えていた。

 テストの難易度は担当教師によって全く違う。

 テスト前に大体の問題予想をしてくれる先生もいれば、非常になあなあな問題を出して学生にいい点を取らせようとする先生もいるし、教科書外から突拍子もない問題を出して学生たちを驚愕させる先生もいる。大概テストというのは教科書のどの部分から出る、というのはよく分析すれば分かるものである。

 この点、エジプト人教師というのは大方妥当な、いい問題の出し方をする。

 ある種のサウジ人は意識してひねっているのか、或いは単なる思いつきなのか、非常に意外なところから問題を出してきてくれる。

 最も難解だったのはフィクフ(イスラーム法)とハディース(預言者言行伝)をご教授頂いたアッ=トライフィー先生。

 ちょっと年配で、遊牧民の雰囲気をまだ残している古いタイプのサウジ人。方言を多用するところ、余り洗練されていないところ、しかしよく知識を暗記しているところ、今一そのメンタリティーが不可解で、時によく分からないところで怒ったりするところなど、何かモーリタニア人教師を髣髴させるところがある。

 中間テストでは教科書外から問題を出し、しかもそれが大学生に訊いても答えられないような難しいものだったので、多くの者が悪い成績を取った。0点という者もうやだ〜(悲しい顔)もいた。大概の先生は中間テストの平均が余り悪いと期末テストで埋め合わせをしてくれるものだが、彼に限ってそのようなことはなかった。僕は教科書をよく読んで出題されそうな箇所をある程度分析しておいたが、フィクフについては、中間テストと同じ問題から再度出題してくれた。しかも難易度が増しており、その問題だけで24点もの振り分け点数がある。信じられない!問題の出題分野から見れば、中間も期末もほとんど教科書の最初の部分からだけである。ある意味、ここまで意外性がある問題の出し方をされると感嘆さえ誘うというものだ。まあ、難しいとはいえ同じ問題を2回問われて答えられないのもしょうがないが。一教科でも落とせば落第なので、必死に脳みその限りを振り絞って喰らいついた。試験後例外なく全ての学生が、彼の出題の仕方に不満をぶちまけあうことに一致団結した。

 期末テストの方式は、同じイマーム大だから当然だが、モーリタニアと同様のやり方だった。番号順に着席し、答案用のノートを渡され、続いて問題用紙が配られる。

 ところで、2つ気付いたことがある。

 1つに、ある種の試験教官(教室に2人いる)の雑談、うるさすぎちっ(怒った顔)。試験の初めっから終わりまで夢中で声を上げて雑談し、学生のことなど気にしてもいない様子。ひどい場合は携帯携帯電話の着メロをあれがいい、これがいい、と音量を上げて選択している。このマナーと神経、信じられない。

 もう1つはカンニングちっ(怒った顔)

 教官の目を盗んで、カンニングどころかずっと談笑している奴らさえいた。クルアーンを全暗記などしている学生だとしても、こんなことをしているんじゃ信仰心も何もあったもんじゃない。試験後注意したが、全くこたえない様子。

 また、全試験を通して僕の右隣に座った東南アジア人学生。僕らの列は教室の最後尾だったのだが、キョロキョロ見るわ、見るわ目。両隣、両斜め前、前の5方向を低い前傾姿勢からのデンプシー・ロール(1)でせわしなく回転する。一度は分からない問題を指差して見せ、小さな声で「サイード・・・」――よ、呼ぶんじゃねぇっつうのexclamation×2冷たいかもしれないが、ダメなものはダメなので無視しておいた。後でやわらかーく注意したが、案の定何の悪気もなさそう。憎めないが、却って始末が悪い。そしてやはり案の定、彼のこの軽快なボディーワークは懲りることなく全試験通して続いた。こんなに動き回ってなぜ教官が気付かないのか、全く理解に苦しむ。注意されたのは全試験を通してたったの1回きり。

 更に、右隣の彼にばっかり気を取られていたが、ふと見れば左隣の中央アジア出身の学生も悠然と高く構えたアップライト・スタイル(2)から静かにこちらを見下ろしている。前者をソツがなくズル賢い東南アジアのカニクイザルと例えれば、こちらはさしずめパミールの上空を悠然と舞うハゲタカ、といったところだろうか。うーん、国民性ってこんなところにまで現れるんだなぁ。って感心している場合じゃないぞ。彼らに神のお導きあれ。

 さて、成績表配布の当日――こんなに試験結果を緊張して待ったのは、高校や大学受験の時でもなかったかもしれない。ドキドキしながら成績を見ると、5段階評価の4の上で合格。平均点でほぼ9割取れていたが、100点満点で67点の最低点のフィクフが足を引っ張っていた。各科目60点が合格ラインだったので、ちょっとヤバかった。何でも、多くの生徒がこの教科に引っかかって落第したのだという。はっきりした情報ではないが、レベル3の5分の1から4分の1に及ぶ数の学生が進級に失敗したらしい。まあ、とりあえずは好感触を得て一安心。

 しかし次のレベル4がその成績いかんで大学入学の可否が決まる、マアハドで最も重要なステージである。まだまだ気は抜けない。






 (1)往年のボクシング世界ヘビー級王者ジャック・デンプシー由来の攻撃・防御技術。低く構えた上体を上下左右に盛んに回転させて相手の攻撃をかわすと同時に、それを攻撃に結びつける。
 (2)ガードを高く上げ直立気味に立ち、高く構えるボクシングスタイル。



posted by サイード at 06:01 | Comment(1) | TrackBack(0) | サウジアラビア日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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"緊張の期末テスト "へのコメント


Pasokon de nihongo ga utenai node eigo de kakimas. Sumimasen.

I'm just interested in Saudi Arabia for a little bit.

I just would like to ask this two questions. One is about you. You directly get into the level 3. Is it common for students to skip level 1 or 2? I can speak and write easy Arabic, so it will be nice if I can skip the Maahad for a year.

Another is about the Maahad itself. Could I just join the Maahad without entering the undergraduate? I cannot study abroad for more than 3 years, unfortunately.

Douka yoroshiku onegai shimas.
Posted by Takeru TAKEDA at 2016年10月02日 15:21
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